研究・業績

研究紹介

内科学第三講座が目指すもの

和歌山県立医科大学・内科学第三講座ではがん医療及び呼吸器疾患医療の向上を目指して、臨床と基礎研究の橋渡しとなる研究を行っています。当講座では新薬の治験を含む臨床試験も盛んに行われており、次世代の薬物療法に関わる研究が可能な環境が整っております。がん患者さんへのより良い治療の提供を目指して、基礎と臨床の橋渡しとなる研究に情熱を持って打ち込んでいます。当講座には医師だけでなくPhD研究員が在籍しており、過去の在籍者も当講座での業績を基に各方面で活躍しております。国内学会のみならず海外学会での発表を積極的に行うとともに、海外留学も奨励しています。和歌山から世界へ向けてのエビデンスの発信を目指すとともに、当講座からがん研究の第一線で活躍でき、次世代を担う人材を送り出すことを目指しております。

肺がんを含む悪性腫瘍における研究

内科学第三講座では、患者さんへの質の高い診療の提供はもちろんのこと、将来の肺がん及び悪性腫瘍の治療成績向上を目指して臨床に根差した研究を実施しており、以下のテーマに取り組んでいます。

  1. がん薬物治療におけるトランスレーショナルリサーチ
  2. リキッドバイオプシー(CTC, cfDNA)研究
  3. 免疫チェックポイント阻害剤のバイオマーカー研究
  4. アカデミア発の創薬研究
  5. 病院医師との共同での臨床研究(新規バイオマーカー、薬剤耐性克服、新規併用療法の開発等)
  6. 次世代シーケンサーを用いたclinical sequencing
  7. シグナル伝達経路を中心とするcancer biologyにおける基礎研究(EGFR, KRAS, TGFbeta等)

多くの多施設臨床試験に参加することで血液を用いた診断法の確立に取り組んでおり、血液中に存在するがん細胞の検出およびがん細胞由来のDNAを用いた診断法の実現に取り組んでおります。がんの基礎研究においては、臨床試験の立案・実施のための薬剤を用いての前臨床研究や新規の治療標的の探索研究を行っております。また、患者検体を用いた次世代シーケンサーによる遺伝子変異解析を行っており、個々の患者さんの遺伝子異常を解析し、将来的に最適な治療を提供するための研究を行っております。

細胞や生体サンプル等を用いた研究が可能です。

余裕を持って各自に十分な実験環境が確保されています。

次世代シーケンサーを含めた最新実験機器を整備しています。

臨床試験について・なぜ重要なのか

肺がんはここ10年で劇的に予後が改善しており、「個別化医療が最も成功したがん腫の一つ」と言われています。その理由として、毎年のように新規の抗がん剤が承認され、ガイドラインもそれを反映したものになっていることが挙げられます(つまり、「最新の治療が最高の治療」という状況が毎年続いているという事です)。
臨床試験の中には未承認薬を用いる「治験」、承認薬の新しい投与方法を検討する「臨床試験」がありますが、肺がんは患者数が多い事も相まって国際的にもスピード感をもった新薬開発が行われています。
当科は和歌山県で唯一、肺がんの臨床試験を担っている存在です。実際我々が参加した治験の中から多くの薬剤が承認に結びついており、患者さんの中には治験に参加する事で(薬剤承認よりもかなり早くから)大きな恩恵を受ける場面も多々見てきました。
臨床試験への参加は、患者さんにとってチャレンジであると同時に希望の光でもあります。数年先のより良い治療開発と同時に、今苦しんでいる患者さんのためにも和歌山県で臨床試験を遂行していくことは我々にとって重要な責務です。

当科の実績

当科では数多くの承認薬について治験の段階から関与しており、結果のいくつかは世界的なトップジャーナルに掲載されています(Ahn, Akamatsu, N Engl J Med 2023, Paz-Ares, Akamatsu, N Engl J Med2023など)。一方でこうした世界的な枠組みに加わるだけではなく、当科発信の研究もいくつか手掛けており、最近では当科の若手がこうした発信を行っています。例えば、村上恵理子医師は抗がん剤使用時の腎障害に関する臨床研究を行い、論文として報告しました(Murakami, Cancer Med 2024)。また柴木亮太医師が術後補助療法の医師主導治験結果を国際学会で報告予定としており、高瀬衣里医師が緩和治療に関する第III相試験を主導しています。このように和歌山からも世界へ向けた発信ができ、それを医師キャリアの早いうちから経験できることも当科の特色です。

今後の展望

最近では肺がんだけでなく、間質性肺疾患に対する治験も開始となっており、より多くの患者さんと新しい治療に挑戦できることは呼吸器内科医にとって嬉しい限りです。
また、新しい治療の中には我々がこれまであまり経験しなかった副作用を生じることもありますが、これらの対応には総合内科的な対応力が問われます。有効性の追求だけでなく、こうした全方面の医療に強い医師を育成していく事も我々の課題です。
引き続き、患者さんにとってより良い治療・副作用の少ない治療の発展に注力したいと思います。

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